のとつづり春号では、田植え時期の「白米千枚田」をご紹介しましたが
(春号の記事はコチラ)、秋の収穫期を迎えると、
たっぷり水を湛えた春先の田んぼの佇まいからは打って変わって、
黄金色と緑のグラデーションが1004枚ある田んぼを彩ります。
世界産業遺産にも認定されているこの千枚田。
さすがは、能登の里山里海を代表する景観です。
時折、海から心地良い風が吹き抜けます。
風に揺られた稲穂が波のように大きくうねると、
その光景はまるで“稲穂の海”のよう。
田んぼに降り立ってみると、ざわわざわわと稲穂の歌声が聴こえてきます。
狭小な千枚田には大きな機械が入らないため、
田植えや稲刈りはすべて人の手によって行われます。
もちろん、刈り取られた稲束を運ぶのも農家の方々。
農繁期になると全国からボランティアを募集し、
選ばれたボランティアと地域住民の方々が力を合わせて、
稲刈りの作業を行います。
実りと収穫の時期は縁起が良いとされているため、毎年9月になるとこの場所で、
一般募集で選ばれたカップルによる結婚式が執り行われます。
初めての共同作業は“稲刈り”です。
国指定文化財にも選ばれている名勝地での挙式は、
新郎新婦にとって一生の思い出になることでしょう。
豊かに実った棚田が、二人の門出を祝福します。
棚田での稲作は、人手による多くの時間と労力を必要としますが、
地域の高齢化や後継者不足によって、その存続が危ぶまれています。
そこで、美しい景観を後世に伝え残そうと、オーナー制度(個人会員2万円)を実施中。
田植えや稲刈りなどの農作業にも参加できますので、
千枚田を守りながら伝統的な稲作体験をしてみたいという方はぜひ!
収穫された稲(コシヒカリ)は、ハザ干しされて、
全国の消費者の元へと届けられます。
ちなみに「ハザ」とは、刈り取った稲穂を掛けて乾燥させておく木組みの竿のこと。
ハザ干しのお米が美味しいのは、天日干しをすることで、
茎の中に残っている養分が穂先まで届くからだそう。
能登の農家の方たちは、最後まで一切の手を抜かず、
手間ひま掛けて米づくりに励んでいます。
千枚田を一望できる道の駅「千枚田ポケットパーク」では、
愛嬌のあるおばあちゃんが手づくりのお土産を販売しています。
おばあちゃんと会話をしながらの買い物も千枚田での楽しみのひとつです。
季節によって多彩な表情を見せてくれる白米千枚田。
能登を訪れる度に足を運んでもらいたい日本の原風景です。
四季折々の景色が楽しめる千枚田。そのため能登が世界農業遺産で有名になる前から、沢山の方が訪れる。稲穂の季節は9月中旬頃まで。人気の秘密は、ただ単に景色が美しい訳ではなく、そこに稲を植え、育て、刈り取る、昔と変わらぬ日本の文化を感じる事ができるからだと思う。